"世間の経済情報は次の四半期・来年とほとんど短期に関するものです。なぜかと言えば、企業は現在・次の四半期・来年と利益を出し続けて行かないかぎり存続できないからです。来年の事を言うと鬼が笑うと言うのは鬼がその人が今年死んでしまう事を知っているからなのですが、企業も同じです。今年度末を越えないと来年は無いのです。
私は、短期経済動向も把握していますが、自分で商売をやっているわけではないので、状況を把握するのに要するエネルギーに対し得るものは多くありません。正直こんな事は趣味だからできるのであって、精度を求めると非常に苦痛になって来ます。
ところが、企業の経営者はそうはいきません。短期的な需要変動に対し生産計画を立て、設備投資・人員の採用計画と利益を最大化する為に数値をギリギリまで詰めないといけません。需要が下回れば固定費が増加するし、需要が上回ればコンペティターにシェアを奪われてしまうからです。
一方、短期の経済変動を利用する投資としては株があるわけですが、ほとんどの方々の能力は機関投資家の情報収集能力と知的水準に対し足元にもおよびません。つまり、ファンダメンタルズ投資といっても実際にできる個人は一部の経済動向を理解できる優秀な人間だけです。結果として多くの方は株価が動く理由もよくわからずテクニカル投資だと言ってなんとなくわかったような気持ちになって株価の動きに追従し、機関投資家に利用されるのです。
話が少し反れましたが、企業は現在を生きる為に短期の経済情報に振り回されている。そして、この短期の状況を把握するにはものすごく労力を要すという事なのです。
私は、レバレッジで1億円の株を動かそうとは思いません。情報が多過ぎて正直CPUが持ちません。私が鵜飼をやればひもは皆もつれてしまうでしょう。
それに比べて、長期予想はお気楽です。今後20年間、日本が中国に抜かれずアジアでNO.1を維持できるなんて予想は国粋主義者でもない限りできません。確かにバブルの前に対しては不動産価格は1/5になってしまいましたが、10年後にこれが更に1/2になるという予測もまたし難いものです。まあ、短期的にどういう変動が有るにしろ長期低落は避けられないというところはほとんどの人間が漠然と考えているでしょう。
重要なのは、そうなった時に競争優位になるような仕組みが仕掛けて有るかという事です。自分もそう考えていたんだよ、とその時になって言っても既にお金持ちになった人には負け惜しみ、負け犬の遠吠えにしか聞こえないのです。
株で儲けなさいという人は、自分が経済がわかっているから、皆さんがいかに経済がわかっていないかわかっていません。失礼な言い方ですが、私は色々な人と話をする度によく資本主義社会で生きているなあと感じます。ほとんどの皆さんの経済知識と日本のファイナンシャルプランアーは小学生みたいなものだと思います。リトルリーグの選手がワールドカップで戦えるなんて夢は見ない方が良いでしょう。まあ、例えば三菱自動車でフェニックスキャピタルがやった事もよく理解できないで株に人生を掛けていたら、命はいくらあっても足りません。
来年18歳になる人は135万人ですが、これは5年前より16万人減少しています。そして5年後また14万人減少します。現在32歳の団塊ジュニアのピーク値は202万人です。いかに単身者向けの貸家の需要が過去10年激減したか理解してもらえますか。
そして、これはバブルの時のアパート建築ブームによる供給過剰と相乗効果を発生させてしまいました。これにより、バブル時アパートを建てた多くの人が空室・家賃の下落という地獄を見たわけです。
そして、32歳にピークがある団塊ジュニアが持ち家に移行しています。これが、現在マンションが売れている理由です。もうお分かりでしょうが、貸家は空いて行きます。そして、40〜50代は従来のようにより大きな不動産に買い換えていません。定年後の資金が心配だからです。どうですか、不動産市況のアウトラインが理解できたでしょう。商業用不動産と裏腹に居住用不動産はお世辞にも先行き明るいとは言えないのです。
普通の人はすぐに好調な市場で上げで儲けようとします。しかし、これはビジネスの正論です。こと投資に関しては狡猾な人間はそんな事はしません。だから、私は『下げで儲けろ。』というのです。"
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