物件個々には特性があって、一概にこうだということはなかなか言えません。同じ家賃でも生み出す利益の大小、はたまた生み出すのは損失なのか、それは様々です。一番大きく影響するのは賃借人の入居期間です。入ってくる月々の収益(家賃)をベースに居住者の入居期間の長い短いから黒字なのか赤字なのかが見えてきます。買うのか買わないのか。持ち続けるべきか売るべきか。目安になると思います。
平均的なものを考えると、マンションの賃貸経営は「家賃3万円」あたりが損益の分岐点のように思えます。そうした仮説で次のように考えてみます。
ローンなし、現金買いのワンルームであっても家賃3万程度なら赤字物件となる可能性が高いと考えます。5年前、レポートを書かせて頂いていた時で札幌の単身者の平均入居期間は2年3か月でした。今はさらに短期間化しているという見方が一般的です。居住者は平均2年で入れ替わると考えます。
<3万円の家賃>
以下の金額は私の経験からのおおよその数字です。1居住者に係わる1サイクルです。
◆3万円の家賃で2年入居の場合なら
A(入居期間2年)
・家賃3万円×24か月=72万円
そのうち管理費・修繕積立金は固定費であり、トータルで1万円ほどかかります。
・2年間の実際の収益は2万円×24か月=48万円。
B(運営費)
・固定資産税は家賃の10%ほどですから72万円×10%=7.2万円。
・年間にかかる故障等の修繕費は家賃の一か月分くらいですから3万円×2年=6万円
・賃貸管理会社管理委託費は一般に家賃の5%で、1500円×24か月=3.6万円
C(2年で退去)プラス 空室3か月
・次の募集広告費が家賃の一か月分で3万円
・原状回復費が家賃の2か月分で6万円
・空室期間3か月で9万円 (空室期間でも管理費・修繕積立金はかかります)
*Cは次の新しい居住者の2サイクル目に入るためにかかる必要経費
3万円の家賃で2年入居の場合なら
A(48万)−B(16.8万)−C(18万)=132,000円
入居期間2年の場合・・・132,000円のプラス
2年間運営してきて、132,000円が利益として見込まれます。
いかがでしょうか、満足いくキャッシュフローでしょうか? 「たたったのこれっぽっちかい!?」もしくは「う〜ん、ヤバくね!?」と思われる方がいらっしゃるのではないかなと思います。私もそう思います。
このほかにもマイナス要因で、滞納、給湯器故障交換、暖房機故障交換、電気温水器故障交換、等々、様々な設備不具合が発生します。13万円のキャッシュフローなどすぐ飛びます。家賃が高くても低くても、機器の修理や交換の費用は同じです。クロス張り替え等の内装原状回復の費用も同じです。地域差も日本全国ほとんどありません。部屋の広さで違ってくるくらいです。
一方、プラス要因は思い浮かびません。というかそういうプラスの旨味を経験をしたことがありません。読んでいても非常にネガティブなんですが、私は決して悲観論者ではありません。あえて言えば石橋を叩くというか・・・ですね。(笑)
上記と同様な条件で計算すると、
3万円の家賃で1年入居の場合なら
A(24万)−B(8.4万)−C(18万)=▲24,000円
入居期間1年の場合・・・24,000円のマイナス
3万円の家賃で1年間空室の場合なら(=所有しているだけ)
入居期間 0 の場合、年間 −15万
管理費・修繕積立金・固定資産税の支出がそのまま赤です。
厳密には、入居期間によって原状回復費は変わるのですが、長期入居も短期入居も経験的には部屋の経年劣化はほぼ同じです。長いスパンで見れば、例えば10年の間、一回も入れ替わりがなく10年間住まわれた場合と、10年の間に1年入居が9回あったとして、その場合と比べると、後者のトータルした費用の方が大きいのです。また現状回復以外でも、短期入居の場合、居住者が入れ替わる度に気になる点の指摘がありますから、そのたびごとに発生するイレギュラーな修繕費が利益を圧迫します。
人によってマンション投資の目的は様々だと思いますから、何年所有するかで変わってきますが、長期所有、長期家賃収入を得ることを目的にしている私にとっては「家賃3万円」あたりの物件は赤字物件です。
ちなみに、最後のパターンの1年間ずっと空室だった場合。ローンもないから、家賃が入らないだけで赤字にはならないかというと、そういうわけにはいきません。管理費、修繕積立金、固定資産税等は黙っていても必ず出ていく出費です。空室が1年間続くなんてそんなことあるの?と思われる人がいらっしゃるかも知れませんが、私は経験がありませんが、おそらく1年以上ネット上に載っていると思われる募集物件を見かけます。募集家賃を下げない。内装に手を入れない(入れられない。資金不足で。)というような理由があるのではないでしょうか。オーナーさんの考え方もあると思います。空室1年はあると思います。ないとは言い切れません。あり得ます。最悪はここまでのケースも想定されます。
空室についてはアパマンプラザのスタッフの方が言っていらっしゃいました。「賃貸は時間の切り売りです。早く決めるに限ります。」なるほどその通りだなと思います。
話を戻せば、極論かも知れませんが、私なりの考えを言えば、家賃3万あたりしかとれない物件は買った瞬間に負債をかかえるようなもので、それが理由で赤字決算しているようであれば銀行への与信は低い、ということです。まあ、論じるまでもなく、金融機関は過去3年〜5年の確定申告を提出させ、プロの目でそのオーナーの賃貸経営がどんな状況か判断します。
私は、キャッシュフローを出すためには、「家賃3万円とれるかどうか」を一つのボーダーと考えています。もっと言えば、年とともに家賃の下落はありあえます。自分の持ち物件の家賃が3万円に下がってきたら考えるタイミングかと思っています。
もちろん、私の限られた持ち物件からの経験なので、物件によって様々ですから、3万円の家賃でも一定の満足いく利益を生み出している物件もあることと思います。
個々の物件の利益体質を上げておかなければならないというのはこうした考えに基づきます。次に行動を起すために必要なことだと思っています。
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