不動産投資コラム マンション投資の鉄人

マンション投資の鉄人

第二十二の鉄人   東北地方在住 瀬谷 潤

不動産は金融商品ではない〜不動産投資における「投資利回り」について考える

不動産投資を実践する際、「利回り」について考えない人はいないでしょう。
不動産投資における利回りとは、雪山を登る際のコンパスのようなもので、利回りの知識のないまま、不動産投資を行うという行為は、地図やコンパスや高度計の知識のないまま、雪山に出かけて行くようなものです。

そもそも「利回り」とは、投資した対価から得られる「収益率」のことです。
簡単にいえば、1,000万を投資したマンションから、年間100万円の家賃が得られれば、利回りは10パーセントということになります。

利回りにも単純に家賃収入から算出する「表面利回り」と、家賃収入から色々な経費を控除した所得から算出する「実質利回り」とがあり、不動産広告では両者が業者によって混在しており注意が必要です。(ちなみに、アパマンさんの広告は、実質利回りで表示されています)

利回りの具体的な算出方法です。
まず毎月の家賃収入から毎月の管理費や修繕積立金等を控除し、毎月の家賃所得額を求めます。
次に、毎月の家賃所得額を12ヶ月分掛けて。つまり年間の家賃所得額を求め、年間家賃総所得額から物件価格を割り、その数字に100を掛けたものが利回りになります。

何やら難しい話になってきているようですが、簡単に利回りを算出する方法があります。
それは物件価格から「0」を二つ取った金額の家賃所得(管理費や修繕積立金等を控除した実質所得)が得られれば、その物件の実質利回りは12%だということです。

例えば毎月3万円の所得(この場合の所得とは、家賃収入から、管理費や修繕積立金等の必要経費を差し引いた、「実収入」という意味です)が得られる、300万のマンションを購入したとしましょう。
300万から「0」を二つ取れば3万円です。
3万円(毎月の家賃所得)×12ヶ月=36万円(年間の家賃所得額)
36万円(年間の家賃所得額)÷300万円(物件価格)×100=12%

不動産投資において、この「12%」という数字が、物件を購入する際の重要な目安というか指標になります。
逆にいえば投資向け物件を売却する場合、この「12%」という数字から物件価格を決めていく傾向があります。
例えば3万円の家賃所得が見込める物件であれば、0を二つ付けて300万。
5万円の家賃所得が見込める物件であれば0を二つ付けて500万という具合に、利回りから目処を付けて、そこから様々な条件などを加味、検討しながら物件価格を決めていくということです。(こういう物件価格の付け方を「収益還元法」といいます)
不動産投資において「利回り」というものが、購入する際も、売却する際も、いかに重要な指標となるかがご理解いただけたかと思います。

「利は元にあり」という商売の格言があります。
「商売で儲かるか否かは元。つまり仕入れにある」という意味です。
不動産投資における「仕入れ」とは、「物件を購入する」という事に他ならず、この物件を選択する際の重要な指標が、この「利回り」だということです。

現在、不動産投資における利回りは、この「12%超え」という物件が珍しくありません。
この数字だけを見れば、金融商品の超低金利の数字と比して、不動産投資の収益率とはかなり高い数字になっています。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
はっきり言って、不動産は、利率の保証された金融商品ではありません。 
不動産投資における利回りとは、入居者がいて、その入居者が遅滞なく家賃を支払ってくれて、はじめて実現するということです。
空室になったり、家賃の支払いが滞ったりしたら利回りどころではありません。
どのような状況下においても、日々の固定経費(管理費・修繕積立金等)や、借金をして不動産投資を実践している場合、元金と利息の返済等は毎月容赦なく掛かってきます。                

更に、一般に言われる不動産の利回り計算には、隠れている数字があります。
それは、管理を委託する際の「管理委託料」と、家賃が送金される際に差し引かれる「送金手数料」。不動産を所有していれば毎年必ずかかってくる、不動産の所有税である「固定資産税」です。(但し、送金手数料が発生するのは、管理を業者に委託している場合のみです。管理を業者に委託せず、オーナーが直接管理する場合、通常、送金手数料は入居者負担ですから、送金手数料がオーナー側に発生することはありません。又、複数の物件の家賃を一つの口座に入金してもらうことにより、送金手数料の一物件あたりの負担割合を軽減することが可能です)
これらの経費も控除した上で利回り計算をしなければ、実際の利回りは出てこない。
しかも、空室リスク。家賃の遅滞リスク等は、利回りにはまったく反映されていない。
表面的には信じられないような高利回りでも、これが、不動産賃貸業という商売における「収益率」の現実なんです。

不動産投資とは、物件を通して、入居者の方に「安全性」と「快適性」と「利便性」を提供し、その対価として家賃をいただくという商売であり、「高利回りの金融商品」なんかでは断じてありません。
家賃を支払い、その物件に住んでいる方は、ある意味、その期間、その物件に人生を委ねているのです。
「高利回りの金融商品」という感覚で、不動産投資を実践することは危険だと思う以上に、何より、利回り中心に考える「金融商品感覚」で自己の物件を人に貸すこと事体、その物件に住んでいただいている方に対し、失礼なのではないかとぼくは思いますが、皆さんはどのようにお考えになるのでしょうか。


著書紹介
『住宅ローン地獄からの生還』    マイブックル 

『住宅ローン破綻 競売があなたを救う〜実践者が語る最後の解決策』    早稲田出版


オフィシャルブログ 『瀬谷流プチ不動産投資日記』 

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