"見えない無駄を断ち、資産の再構築をはかる"
" バブル崩壊から10年経ち、アメリカンスタンダードが日本を席巻し、企業や社会の変革が進んでいます。 この10年を「空白の10年」と呼ぶ方がおられますが、全く検討違いの表現です。 この10年の行動こそ企業や個人の将来を決定してしまったと言っても過言ではないのです。 まさに「運命の10年」なのです。 バブル崩壊後こういう構造の変革を予想せず、この不況を循環的なものと考え何も手を打たなかったのは本人の失敗です。 手を打ってきた人達がいる限り資本主義社会では敗者です。
はっきり言って、冷たいようですが50代でこの10年を漫然と過ごし、十分な蓄えをしてこなかった方々はもう手遅れです。 今になってN証券の一時の宣伝のようにリタイヤまでに運用可能な資産を1億円貯めましょうと言われても打つ手はありません。 もう人生の経済的敗北は明らかです。もはや定年後はつつましい生活を送るしかありません。 私はちょうどこの広告が出た時リタイヤ後どのくらい運用可能な資産が必要かスタディしていたのでN証券の広告には強いインパクトを受けました。 1億円というのは非常に良くスタディされた結果だと思います。一流企業の管理職を定年した後も元金を食いつぶさずに社会的対面を保つには最低の金額でしょう。こういう明確な金額を出すところなどさすがN証券だと感心させられました。 その後広告の内容が後退してしまったのは現実と目標のギャップが大きく手応えがあまり無かったせいではないかと邪推していますが、この金額が必要という事実が変わったわけではありません。
幸いな事に私はバブル崩壊の痛手から立ち直るために、過去10年間憑かれたように不良債務の処理と資産の拡大をはかってきました。 正直なところ、ここまで急速に色々な変革が進むとは予想していませんでした。最近は物事が非常に早く大きく動く傾向があるので注意が必要です。 私が行ってきた対策の一部は「40代の戦略:債務超過からの脱却」をみて頂ければおわかり頂けると思います。 とにかく前述のように既にバブル 崩壊後すみやかに資産運用の再構築をはかり、資産デフレの中で着々と資産の増大をはかってきた人達がかなりいるということは事実です。
私の場合、社会の変革と言うものを英国で知ることができたことがことがきっかけとなったことは何度もお話してきましたが、もう一つ私に非常に危機感を抱かせたのは、日本の企業の経営に疑問を持ったことです。 英国滞在中に英人・日本人の色々な方々と話す機会がありましたが、多くの日本企業の海外事業がビジネスシステムとして機能していないというのが我々がいつも話題にすることでした。 実際にその後多くの日本の銀行のブランチはクローズされました。 私は多くの日本の企業のこういう収益を無視した成り行き任せの経営体質はそんなに簡単には修正されないと思います。 企業にいてぶちぶち経営について不満を言っても始まりません。まず自分の頭の蝿を追い払うことです。 本当に10年なんてあっという間にたってしまいます。
私自身色々な方々とお話する機会がありましたので負け組になってしまった企業の方々の気持ちもよくわかります。 負け組になるのも勝ち組になるのも個人の問題というより経営の問題です。 「敗軍の将を語らず。」と言いますが、だいたい負け戦というのは兵隊ではなく経営(戦略)がまずいのです。愚かな経営者に従業員がどうこういう資格が無いのは当然です。 でも敗軍となって惨めな思いをするのはいつも兵隊なのです。
私も友人達を見ると本当に寂しい気持ちになります。 勝利を夢見て深夜まで働き、夢破れた現在なお厳しい状況の中で働き続けなければいけないのです。 早朝出勤深夜帰宅のため子供と週末しか顔を合わさないために日曜日の夕方子供に「おじさんまた来てね。」と言われたという話など冗談にもなりません。 一度限りの人生がそんなもので良いのでしょうか。
とにかく、まずこれからの乱世を生き残るために贅肉のついた生活全般のリストラをはかることです。 現在破綻の3大原因である、自宅・車・教育費にはかなりシビアにならなければいけません。 まず、自宅ですが間違ってもマンションが手狭になったからといって新たなローンを組んで一戸建てに買い替えてはいけません。 現在の状況においては収益を産まない資産への消費への優先順位は落とすべきです。 次は車です。いつも言っておりますが、車は資産形成の敵です、車への誘惑に負けた者に未来はありません。 車は資産形成ができてから買えば良いのです。1億円貯まれば、一年の運用益でベンツだって買えるのです。 私も最近国産車を買いました。 同じ性能の欧州車を買おうとすれば倍のお金を出さなければいけないでしょう。年収の20%を超える価格の車を買うというような無駄な見栄の消費は資産形成の途上に有る人間のやることではありません。 教育は微妙な問題なので具体的な事をいうのは控えますが、バックグラウンドとなる所得が無いのに、幼稚園からプライベートとか避けたいものです。 本当に子供のことを考えるのなら生活の助けになる資産を残す方が私は良いと思います。
このような生活全般のシェイプアップができてまとまった種銭ができたらとにかく投資用不動産に投資するのです。 お金が既にたくさんある人の運用方法は色々ありますが、ローリスクで1〜2千万円程度のお金を10〜20年で数倍にするには不動産投資しかありません。 とにかく定年までに1億円貯めることを目標にすることです。
でも良く考えてみてください、確かに運用資産1億円は高額ですが、自宅の資産価値を考えると1億円はそんなに高額でもありません。 そう、今回私が言いたいのはしつこいようですが「資産家をめざすならまず収入を生まない資産である自宅と収入を生む投資資産の割合を良く考えてください。」ということなのです。
自宅の購入パターンについて一般的な英人の例で紹介しますと、彼らは独身の時は1or2ベッドルームの小さい家を購入します。そして結婚して子供が成長して手狭になると3or4ベッドルームの大きい家に買い替えていきます。 私がまず日本人で非常に無駄だと思うのは、英人のように世帯数と家の大きさに関連がなく若い夫婦と幼児しかいないのに大きな家を買うことです。 これは、日本人が一旦住んだところに一生住み続ける気持ちが強いためと思われます。 この問題は非常に見えにくいのですが、どういう損失が発生しているか簡単に試算してみたいと思います。
ここでは、2000万円の自宅と4000万円の自宅を買った人の差を見てみたいと思います。 4000万円の自宅を買うということは30代の若者にとって非常に快いものでしょう。この優越感こそ消費への動機です。 しかし、2000万円で用が足りるところに2000万円の余分のお金を使ったわけですから、この2000万円分に対する年間利息50万円が費用となります。 これが物置となっている部屋の維持費と考えればわかり易いのではないでしょうか。 ほとんどの方がこのみえざる損失に気づかれておりません、恐ろしいことです。 英人のようにまずは必要な2000万円の家を買い、4000万円の家は10年後に子供が大きくなって必要になった時に買えば良いのです。
では更に2000万円の家と2000万円の投資用マンションを買った場合はどうでしょうか。 2000万円の投資マンションの利回りが6%とすれば借入れ金利3%との差3%が収益となります。 つまり60万円の利益が出ている計算になります。 結局、4000万円の自宅を買った人と2000万円の自宅と2000万円の投資マンションを買った人の差は年間約100万円もあるのです。 そして10年で1000万円近くになってしまうのです。
次は車で考えて見ましょう、20歳から50歳まで30年間あります。 4年に一度買い替えたとして7台買うことになります。 300万円の車にすれば合計2100万円です。 100万円にしておけば700万円でこの差額は1400万円になります。一回一回はたいした金額でなくても回数が多いと意外と金額的にかさんでくるものです。
まだ子供の学費と言ってもあまり実感はないでしょうが、例えば現在私立の大学の理科系の学費は4年間で800万円程度かかります。 2人行けば1600万円です。 これに対し国公立では2人で600万円程度です。 差額は1000万円です。
以上、簡単に試算しただけで家・車・教育で3400万円も支出を削減できることがわかります。 いかにひとクラス上の生活をすることのコストが高くついているかわかって頂けたのではないでしょうか。 もしこのお金をうまく運用していれば5000万円くらいにはなっているでしょう。
でも勘違いしないでください、私は人生全般で生活水準を落とすように言っているのではありません。若い時代の生活水準を少し落として、中年以降の生活水準を上げるように消費配分を考えた方が良いと言っているのです。 なぜならば、中年以降でさえない格好をしているとか、古い車に乗っているとかしているということは、人生の経済的敗者であることを示す以外のなにものでもないのですから。 特に今後能力主義が徹底してくると「貧しい人=能力の無い人」という図式が明確になってきます。 自分より若い世代が高給を取り良い生活をしているのを見ながらつつましい生活というのは決して気持ちの良いものではありません。
最後になりますが、人間の価値はその人の資産の額で決まるものではありません。 その人の精神の高貴さで決まるものです。 私は西部すすむ先生の「精神の貴族」のお話は人生の指針にしております。 こういうことを知った上での提言であることを付け加えさせて頂きたいと思います。 昔から「恒産なくして恒心なし。」と言いますから。 "
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