主に固定資産を評価するための会計手法のことであり、国際会計基準において採用されている世界共通の会計手法のこと。
国際会計基準委員会は、固定資産の評価基準として減損会計を導入することを1998年6月に「国際会計基準第36号」として正式決定している(「国際会計基準」参照)。
これを受けてわが国では、金融庁の審議会である「企業会計審議会」が1999年10月から審議を開始し、2002年8月には同審議会より「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」が公表された。
この意見書によりわが国でも減損会計を上場企業に適用することがほぼ決定されたので、今後証券取引法(財務諸表規則)が改正される予定であり、上場企業については2005年度から完全実施(2003年度-2003年度3月期-から各上場企業の任意により早期実施)される見込みである。
減損会計とは、決算日における土地・建物等の固定資産の価額を測定する際に、当該資産が生み出すキャッシュの総額(過去に既に獲得したキャッシュと将来獲得するであろうキャッシュの両方を含む)が、その資産の帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を控除した残額のこと)よりも低くなった場合には、その資産の帳簿価額を、臨時的に引き下げる、という会計基準のことである。
従って、例えば土地の鑑定評価額が下がったから貸借対照表における土地の価額を切り下げるという単純な時価評価ではなく、あくまでその固定資産の使用目的から推測されるキャッシュの獲得予定額との比較において、固定資産を再評価するという考え方を指している。このように減損会計は従来のわが国ではあまり馴染みのない概念であるが、欧州では古くから使用されてきた概念であり、すでに国際会計基準の一部となっている。
日本では減損会計が2005年度から完全導入される予定であるので、上場企業では、再評価によって帳簿価額の切り下げを余儀なくされるような土地・建物を早期に売却し、財務体質を早期に健全化する動きが進行しつつある。そのため減損会計の導入は、不動産市場における供給要因となることが予想される。
なお、固定資産のうち、主に賃貸収益獲得を目的とする賃貸ビル・賃貸マンションなどの不動産や遊休地にも、減損会計が適用される予定である(「投資不動産」参照)。 |